「私は不育症ですか?着床障害ですか?」あるいは、「化学流産は、流産ではないのですか?」という、ご質問を最近、よく受けています。 なぜ、わかりにくいのか。それは、「化学流産」の医学的な解釈にあります。 「化学流産」は、化学的流産、化学妊娠、または、生化学妊娠とも呼ばれています。最近の国際学会では、biochemical pregnancy と言われています。 化学流産の医学的な定義としては、妊娠反応がでても、経膣的超音波検査で胎嚢が見える以前に、つまり、妊娠4週時点で、その妊娠が自然に流れた状態のことを言います。 ただ、現実的には、市販の妊娠検査薬で陽性がでても、超音波検査を受ける以前に、その妊娠が自然に流れた(流産した)場合、化学流産だったのか、流産だったのかはわかりません。 2回以上連続して流産した状態は、不育症と定義されていますが、この場合の流産とは、胎嚢が見えてからの流産とされています。 その理由として、化学流産は本当に妊娠していたのか確実ではないということと、化学流産の原因として卵の質(主に染色体異常)の割合が多いからだと思われます。 ですから、不育症かどうかの診断上、化学流産は流産の回数にはカウントしない、あるいは、流産ではないと、説明されることがあるのです。 一方、着床障害の定義は、まだはっきりしていませんが、合計3~5回以上の体外受精・胚移植の治療が、妊娠反応陰性、あるいは化学流産に終わった状態と、考えられています。 ですから、ややこしいことですが、合計3~5回以上の体外受精・胚移植の治療結果が、妊娠反応陰性、あるいは化学流産に終わっていれば、着床障害ですが、胎嚢が見えてからの流産も、2回以上連続して経験していれば、不育症でもあるのです。 本質的には、着床障害と不育症の原因論から考えて、その時期による原因の割合と原因の種類の違いはありますが、子宮内膜組織へ卵(胚)が入り込んだ時点から、どの時期に発育が止まってしまったかということで、着床障害も不育症も、広い意味で流産と考えられると、私は思います。