2012年7月の欧州ヒト生殖会議のなかで、着床障害について、イギリスの研究機関から下記の内容の発表がありました。 着床障害の定義として、1. 子宮内に胎のうが見える時期まで妊娠継続ができない。2. 少なくとも合計4個の卵(受精卵)を移植しても失敗している。3. 少なくとも合計3回移植(新鮮、凍結卵)しても失敗している。4. すべて質の良い卵を移植している。5. 年齢は40歳未満である。という5つの項目を満たしたとき着床障害とすることが提案されました。 着床障害の原因は、卵(受精卵)か子宮(内環境)であり、卵は、エンブリオロジストの技術に左右される。子宮は、ドクターの技術に左右される。 子宮内側に発育した子宮筋腫(粘膜下筋腫)、子宮内膜ポリープ、中隔子宮は、着床障害の原因である。 子宮内膜の厚さと着床障害との関係は不明である。 卵管留水症があると、移植の成功率は半減する。 これは、かなり信頼性が高い報告です。 卵管炎という炎症が卵管留水症の引き金になっている可能性が高いので、卵管という子宮内に極めて近いところの炎症が、移植の成功を妨げているように考えられます。 また、ひとつの研究的治療法として、FSHホルモンが10以下の場合、移植する前の基礎体温高温期に子宮内膜を機械的に少し引っかくと、移植のよる妊娠率が約60%になった。 という研究成果を発表していました。 私の印象として、着床障害は、移植回数、年齢、さらに、心理社会的因子の程度により、大きくその予後が違いますから、子宮内環境の危険因子の検査とその治療法は、これからの多くの臨床実績とその研究により、もっと詳細にもっと明確にされていくものと思われました。