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484.着床前スクリーニング(PGS)の利点と欠点

日本でも先月、日産婦学会により、
PGSの臨床研究が開始されたことが
報告されました。

ヨーロッパの多くの国とアメリカでは
数年前より実際の臨床で行われています。

実際の臨床現場では、
できるだけ多くの卵子を採取して、
授精後、5日目の胚盤胞まで
培養できなければなりません。

約100~200個の細胞(胚盤胞)のうち、
胎盤になる外側の細胞数個を採取して、
採取した細胞の全染色体(遺伝子の塊)
を検査するのが、
着床前スクリーニング(PGS)検査です。

ただし、胚盤胞の胎盤になる一部の細胞を
検査していますので、残りの多くの細胞が、
すべて同じではない場合もあり、
モザイクの頻度も低くはないため、
100%正確とは言えません。


最近、アメリカで問題になっている欠点は、
PSGで異常と判断され廃棄される胚盤胞の中に、
実は正常な胚盤胞が存在している可能性が
指摘されている点です。

また、胚盤胞まで培養しなければならないため、
初期胚(2日目の胚)までなら十分培養できる
高年齢女性の妊娠出産の可能性を
かえって低くしているかもしれないという点です。


利点としては、
PGS検査で正常卵の移植の妊娠成功率は、
約50~60%と言われており、
従来の顕微鏡検査による良好胚の移植の
妊娠成功率、約30%の約2倍である点です。


PSG検査には、利点と欠点がありますが、
当院の経験から、
PGS検査の効果を実感した事例が
複数あります。

高年齢で、移植回数と流産回数が非常に多く、
流産児の染色体検査で複数回、
偶然的な数的染色体異常を
経験されていた方々の治療経験です。

時間と費用と社会環境のストレスにより、
精神的にも非常に追い詰められていました。
子宮内環境にも問題を抱えていました。

最終的に、海外も含めた他施設により
PSG検査で正常な卵を移植され、
当院の治療も並行して行い、
約60%の方が無事出産されているのです。

最終更新日: 2021年08月25日 13:16