日本でも先月、日産婦学会により、PGSの臨床研究が開始されたことが報告されました。 ヨーロッパの多くの国とアメリカでは数年前より実際の臨床で行われています。 実際の臨床現場では、できるだけ多くの卵子を採取して、授精後、5日目の胚盤胞まで培養できなければなりません。 約100~200個の細胞(胚盤胞)のうち、胎盤になる外側の細胞数個を採取して、採取した細胞の全染色体(遺伝子の塊)を検査するのが、着床前スクリーニング(PGS)検査です。 ただし、胚盤胞の胎盤になる一部の細胞を検査していますので、残りの多くの細胞が、すべて同じではない場合もあり、モザイクの頻度も低くはないため、100%正確とは言えません。 最近、アメリカで問題になっている欠点は、PSGで異常と判断され廃棄される胚盤胞の中に、実は正常な胚盤胞が存在している可能性が指摘されている点です。 また、胚盤胞まで培養しなければならないため、初期胚(2日目の胚)までなら十分培養できる高年齢女性の妊娠出産の可能性をかえって低くしているかもしれないという点です。 利点としては、PGS検査で正常卵の移植の妊娠成功率は、約50~60%と言われており、従来の顕微鏡検査による良好胚の移植の妊娠成功率、約30%の約2倍である点です。 PSG検査には、利点と欠点がありますが、当院の経験から、PGS検査の効果を実感した事例が複数あります。 高年齢で、移植回数と流産回数が非常に多く、流産児の染色体検査で複数回、偶然的な数的染色体異常を経験されていた方々の治療経験です。 時間と費用と社会環境のストレスにより、精神的にも非常に追い詰められていました。子宮内環境にも問題を抱えていました。 最終的に、海外も含めた他施設によりPSG検査で正常な卵を移植され、当院の治療も並行して行い、約60%の方が無事出産されているのです。