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同種免疫

妊娠の成立と継続に重要な働きを持つ免疫のお話です。

免疫の働きは、異物を攻撃することです。
しかし、
胎児は半分異物ですが、
普通は攻撃されません。


その理由は、
ヒトの進化の過程で

胎児抗原(異物の標識)に対してだけは

局所的かつ特異的な
免疫の抑制機構が、
作られているからです。


現在判明しているその抑制機構とは、

胎盤の栄養芽細胞
(トロホブラスト)に特に多く発現する
特有なHLA―G抗原が(可溶性抗原もあり)
いろいろな免疫細胞の受容体に結合して、
NK細胞の細胞障害活性を阻害したり、
制御性T細胞を誘導したりして、
免疫寛容を誘導しているというものです。

 

しかし、いろいろな理由で
(たとえば、HLA-G抗原の発現が弱いとか、
免疫がHLA-G抗原に適切に反応できないとか)
免疫寛容が不十分なときには、

流産・着床不成功が連続する
可能性が高くなると考えられます。


免疫を全身的に抑制すれば治療
できるというものではありません。

移植(胚盤胞)後の5日目頃には
すでに子宮胎盤循環(母児間交流)が
始まりまっているのですよ。


移植5日目までの発育が順調ならば、
胎児側細胞から出るβ-hCG
というホルモン(妊娠検査薬)が
血液検査ですでに検出できるのです。

移植(胚盤胞)後の10日目頃には、
早朝尿でも検出されます。
(これが一般的に言う妊娠検査薬)


生殖・発生学的に見れば、

移植後、胚が子宮内膜に接着する
最初の約4日間における
不成功の子宮側の原因は、
未だブラックボックスですが、

移植後5日目頃からの不成功
の子宮側の原因には、

「妊娠の同種免疫異常と
生殖ストレスの
複合的原因」

が高頻度に存在している
と考えられます。


生殖ストレスと同種免疫の
詳しい検査をしたうえで、

ストレスのよる子宮内細動脈の収縮を防ぎ、
ストレスによる子宮内免疫の異常を防ぐ
ことが最大の治療になると思います。

子宮内や膣内のフローラ(細菌叢)を、
遺伝子検査できるようになってきましたが、・・・。

人間の粘膜(口や鼻や腸)には無数の常在菌があり、
エール大学のギル モア教授は、
「人間の体の常在菌が妊娠の継続に極めて重要である」
という有力な研究報告をしています。

2015年に「サイエンス」という権威ある医学誌に、
「寄生虫と妊娠継続の関係」が報告されました。

世界の10億人以上が何らかの寄生虫に
感染していると言われていますが、

回虫に感染していると、
感染していない婦人に比べて妊娠、出産率が高く、
十二指腸虫では逆に低いという内容です。

胚(受精卵)も子宮で寄生して育っているわけです。

つまり、
胚を受け入れる免疫と、
拒絶する免疫があると考えられるのです。


身体とこころの状態によって影響を受ける
子宮内フローラの検査は参考にはなりますが、

「胚へ直接的に影響を及ぼす免疫状態」
の詳しい検査と、
その治療が大切です。

Th1/Th2比が高い人は、高くない人に比べて
その後の妊娠で有意に流産率が高くなったという
報告はありません。

正常妊娠維持にはTh2優位が必要という概念が
20年ぐらい前に支持されていましたが、
動物実験では否定的です。

妊娠の同種免疫検査として、
Th1/Th2比だけでは不明です。


タクロリムスは、ステロイド以上の
強力な免疫抑制薬ですから、
移植免疫には有力な薬ですが、
妊娠免疫には現時点でお勧めできません。

妊娠維持のための免疫抑制が必要と
考えられる場合は、
まず適量なステロイド治療と思います。


タクロリムスは、日本の公文書としての添付文書に、
「警告」 として(2021年)、
重篤な副作用により、致死的な経過をたどる
ことがあるので、緊急時に十分に措置できる
医療施設及び本剤についての
十分な知識と経験を有する医師が使用
と記載されています。


Th1/Th2細胞比という免疫検査の説明は
ブログNo.549を参照ください。

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