<青木産婦人科クリニック> 不育症・着床障害・婦人科全般

不育症の検査と治療について

治療の効果について

質問:初期流産を5回しました。
夫婦の染色体に異常はなく、いままでに柴苓湯、アスピリン+ヘパリンの治療を受けました。
次回はリンパ球移植を勧められています。
青木先生は夫リンパ球移植をいち早く日本で実施されたと伺い、このたびHPへアクセスさせていただきました。2点質問したいことがありますのでおねがいします。
最近、リンパ球ではなくてピシバニールという抗ガン剤の一種を注射されているそうですがその理由を教えて下さい。
またリンパ球移植をした場合抗体ができにくいケースは考えられないでしょうか(医療従事者のB型肝炎の予防の注射がなかなか抗体ができなかったり抗体が消えてしまったりすると聞いたことがあります。)
遠隔通院についてもご意見をお聞かせ下さい。

回答:5回初期流産されているとのこと。
2000症例以上の不育症患者さんを診てきた臨床実績から、6回以上の連続流産患者さんの成功率は、約50%です。そして、その時点での原因(流産危険因子)はほとんどの例で複数個あります。
その中の大きなひとつがストレスです。
くやしくて、情けなくて、不安で、不安で、また次の妊娠そのものが怖くてという状態の人がよくこちらに来られます。これは本当にだんなさんも含めて、普通の人には到底理解できないと思います。
あなたのこれまでの人生において、これほどの屈辱感、挫折感はなかったのではないでしょうか。
今、あなたは強い自尊感情を持って、自分自身の心を守ろうと思っているはずです。
流産とは、あいまいな表現です。
実際には、最も待ち望む女性のその子宮の中で、その新しい生命が死滅することです。
本人以外はこれを死とは考えずに、記憶の外においやってしまおうと考える傾向にあります。
これではだめです。あくまでも事実を直視して、ヒトの小さな生命の死と捕らえ、十分に悲しむことが、その女性自身の心にとって、また次の妊娠にとって、非常に大切です。

あなたの流産に関する検査、治療歴を拝見しました。
まず言えることは、ひとつひとつの検査異常に対して、そのつど治療するのではなく、可能性のある危険因子すべてに対して、一度に過剰に予防治療する必要があると思います。
あなたの場合、染色体異常、卵巣機能異常、子宮形態異常はあまり問題なさそうです。
自己免疫異常もなさそうです。
しかし、精神・神経系の異常と同種(拒絶)免疫異常はありそうです。
なぜならば、潜在性高プロラクチン血症があるからです。
プロラクチンは神経伝達物質としての働きもあり(別名、愛情ホルモン、またはストレスホルモン)、また、子宮内膜のナチュラルキラー(NK)細胞の活性を高めます。
NK細胞活性が高すぎると胎児は妊娠母体から拒絶されやすくなってしまいます。
さらに、流産回数が多いと、細胞間の基質が硬くなり、妊娠初期に胎盤組織が子宮内膜の奥に進入しにくくなります。
これは、血中のTGF-beta1というサイトカインを調べれば判断できます。また、それに対する治療も可能です。
NK細胞活性が高い場合には、ピシバニール免疫療法があります。
この治療により、NK細胞活性は正常値になってゆきます。

ご質問に対する答えですが、ピシバニールは抗ガン剤ではなく、免疫賦活剤です。
ピシバニール免疫療法は夫リンパ球免疫療法より有効性があり、安全性が高いことが判明しています。
ただし、まだ、臨床治験中の新しい治療法です。その内容は、2001年6月に、シカゴでのアメリカ生殖免疫学会で特別講演として発表しています。

もうひとつのご質問ですが、夫リンパ球免疫療法は抗体を作るのが目的ではありません。
以前は抗夫リンパ球抗体が妊娠維持に必要な抗体と考えられており、それを作るのが目的で、夫リンパ球免疫療法は開発されました。
しかし、現在の新しい研究成果では、その抗体は夫リンパ球免疫療法の副現象のひとつであり、妊娠維持に必要なものではないことが判明しています。
夫リンパ球免疫療法にしろ、ピシバニール免疫療法にしろ、これらの治療法の基本原理は、妊娠母体による胎児抗原の認識を助けることにより、妊娠維持を有利にすることです。
昔から、異系間の妊娠は、同系間の妊娠に比べて妊娠維持が有利に働いていることがわかっています。
子宮内膜症があるならば、内膜基底膜に対する自己抗体、ラミニンI抗体を持っていらっしゃるかもしれません。
それも研究段階ですが調べてみましょう。検査は1日でできます。
いつの日か近いうちに、必ず、あなたのあかちゃんを抱きしめることができますよ。

夫リンパ球治療とピシバニール治療について

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