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(10). 抗リン脂質抗体による流産率は約80%です

抗リン脂質抗体については、1985年頃よりよくわかってきました。わかってきたきっかけは、もともとSLEという自己免疫病(膠原病)の女性は流産率が高いという現象がわかっていましたが、その中でも、抗リン脂質抗体という自己抗体を持っている婦人に特に流産率が高いことが判明しました。それがきっかけです。その後、普通の婦人においても抗リン脂質抗体をもっているとよく流産することがわかってきました。抗リン脂質抗体というのは自己抗体です。抗体というのは、外界からの侵入物に対して反応する免疫グロブリンのことですが、自己抗体というのは、自分自身のタンパク質にも間違って反応してしまう抗体のことです。女性は男性に比べて自己抗体を作りやすいと考えられています。その理由のひとつとして、女性は精子という異物を身体のなかに受け入れる機会がありますので、異物にさらされやすい環境にあるということです。もうひとつの理由は、妊娠した場合、その胎児細胞というのは半分が夫由来ですが、残りの半分は自分自身でもありますので、そこで間違って自己抗体を作ってしまいやすい環境にあるということです。

自己抗体の代表格である抗核抗体は不育症患者さんに高頻度(約18%)に認められますが、それ自体が流産発症に直接関与していることはないようです。抗リン脂質抗体は不育症患者さんの約17%に出現し、流産率(流産発症危険率)は約80%と推定されています(表2参照)。ところで、その抗リン脂質抗体については、現在10種類以上も検査可能です。しかし、その種類別とその抗体価別の流産率については、いまだ臨床研究の途中ですので不明確な点が残っています。ですから、その治療対象とその治療方法についても、不育症の専門医によりまちまちです。また、検査の一部は保険でできますが、多くの検査とその治療については自費となっています。

最終更新日: 2016年05月24日 17:33