院長のブロブにて連載中の内容を中心に転載しました。
原因不明不育症患者では、
健常者に比べて、
Th1免疫細胞/Th2免疫細胞
の比が高く(Th1優位)、
夫リンパ球免疫治療すると、
多くの例で
Th1/Th2細胞比が低下して、
低下した患者さんでは、
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「不育症戦記(作/楠 桂)」(2010年3月19日発売)に寄稿した内容を現在の情報に改編しました。
不育症で悩んでいる人、不育症に関心のある人、また、流産を経験された人、これから妊娠されようとしている人に、読んでいただきたいと思います。
赤ちゃんを授かったにもかかわらず、流産や死産で失ってしまうのは悲しくつらいもの。
それを繰り返す「不育症」については、まだまだ知られていないのが現状です。
不育症の原因、その検査法や治療法、ストレスとの関係について、2018年までの知見をもとにお話しします。
流産、化学流産を繰り返し、先が見えない今、まずは読んでみてください。
不育症の医学情報、不育症の統計データなど。
原因不明不育症患者では、
健常者に比べて、
Th1免疫細胞/Th2免疫細胞
の比が高く(Th1優位)、
夫リンパ球免疫治療すると、
多くの例で
Th1/Th2細胞比が低下して、
低下した患者さんでは、
有意に高く妊娠維持に成功した
という報告が2000年にありました。
(Am J Reprod Immmunol)
Th1細胞は、
インターフェロン・ガンマ(IFN-γ)
という物質を分泌して、
ナチュラル・キラー(NK)細胞等を活性化し、
細菌やウイルスなどの異物を攻撃します。
Th2細胞は、
インターロイキン4(IL-4)
という物質を分泌して、
B細胞を活性化し、
花粉やダニなどのアレルゲンに反応します。
当院では、開院時より、
Th1/Th2細胞比の検査より
さらに信頼性の高い
インターフェロン・ガンマ(IFN-γ)と、
インターロイキン4(IL-4)の
高感度 精密 定量 検査を
行っています。
タクロリムスは、
ステロイド以上の
強力な免疫抑制薬であり、
腎臓などの臓器移植における
拒絶反応を抑制する薬として、
近年、開発されました。
反復着床不全(着床障害)の患者さんで、
Th1/Th2細胞比が高い場合、
移植前より妊娠成立までの期間に、
タクロリムスを服用すると、
少数例の研究ですが、
妊娠率が有意に高かったという報告が、
2015年にありました。
(Am J Reprod Immmunol)
理論的にも魅力的な
臨床研究結果ですが、
2018年7月改訂の
日本の医薬品添付文書(公文書)では、
「警告」 として、
「本剤の投与において、
重篤な副作用により、
致死的な経過をたどることがあるので、
緊急時に十分に措置できる医療施設
及び本剤についての十分な知識と経験
を有する医師が使用すること。」
と書かれていますので、
十分な注意が必要と考えられます。
当院では、免疫検査で
免疫抑制が必要と判断された場合、
子宮内ステロイド洗浄治療と、
ステロイド内服(10mg~15mg/日)治療
を行っています。
他院で不成功が続いている
難治性不育症、
難治性着床障害
の方への治療の一つとして、
良い成績を得ています。